1回目は、全体の流れをつかもうという見方をしたので、今回は細部に注目を払おうという考えで臨んだら、1度観ているにもかかわらず、ストーリーの繋がりがちっともわからなくなった(^^;; これは勢いに乗って、ダーッと観ないとピンと来ない映画かも知れない。終戦のときからの物語だから、いくつも絡んでくる親子関係などが頭の中で整理されないと、その人がなぜそのような境遇に身を置いているのかわからなくなり、宙づりになった気分になる。1回目より更にわからないところが増えた印象だ。その疑問はネタバレにも繋がるので、ネタバレ専用の場所に書くことにしよう。

エンターテインメントに特化したというだけあって、動きのある部分は面白くできている。カーチェイスやアクションシーン、50億を目の前にした人々とその使い途、さらには国連のシーンなどがそうだ。

各登場人物に割り振る登場シーンの長さが十分でなく、今回もまた圧倒的に時間が足りない気がした。十分描けていると思われるのは石だけで、真舟ですらちょっと物足りない。彼のM資金に対する執着の根拠をもっと見せて欲しかった。

文句ばかり言っているが、決してつまらない映画だとは思わない。近年、経済問題をテーマにし、しかもそれにエンターテインメント性をたっぷり盛り込んだ作品はとても珍しく、新鮮だ。マネー経済にどっぷり浸かっている現代人は、それ以外の世界を想像できなくなっている。そんな世界のあり方に風穴をあけ、根本からひっくり返そうというのは、人の生きる哲学をも転換させようとする究極の試みでもあろう。だから経済をテーマにしながら、描かれているのはやはり人間なのである。だからこそ、もっと尺が長かったらよかったのに、あるいは前後編にしたらよかったのにと思うのだ。もちろん予算というものがあるから、無い物ねだりなのだが。小説は第4巻が間もなく出る。読んだらまた映画を観たくなるだろう。

(2013.10.10 プレミア試写会、丸の内ピカデリーにて)
以下、ネタバレあり。



次に観るときの宿題にしておきたい点を書いて置く。

人物設定としてわかりにくいのは、豊川悦司の演じるハリー・遠藤だ。終戦時、金塊を運ぶ際に彼の役目はどのようなものだったのか、映画を観ただけではわからないし、アメリカ側の人間なのだろうとかろうじて推測できる程度だ。公式サイトではCIAと説明されているが、それがわかるような部分があったろうか?

祖父のあとを継いだ(映画ではそれが懐中時計によってほのめかされるに過ぎない)遠藤治(ユ・ジテ)が、雇い主を裏切ろうとするシーンはなかなかよかったと思うが、あんなに本庄をいとも簡単に始末できるくらいなら、Mや真舟も仕留めるチャンスはいくらでもあったと思えるのに、それをしなかったのは、石がボディーガードしているために、おいそれと手を出せなかったからだろうか。本庄を始末したのは見せしめであり、Mにプレッシャーをかける目的だけだったのだろうか。また、遠藤治はもっと何かを背負って生きてきた人間に見えるのだが、まったく説明がないのが残念だ。

自殺した笹倉雅彦という存在がまったく印象に残っていない。父暢彦と雅彦、また兄雅彦と弟との人間関係がよくわからない。