丸 9 しいたけ番長
丸10 人生の遍路道
丸10 人生の遍路道
あっけなく最終話を迎えてしまった。配信もやっぱり週に1話くらいにしてもらわないと、楽しみが長く続かない。かといって、例えば一挙に配信された3話を自分で3週に分けて視聴するなどというやり方もうまくはいかない。1週間後には次の3話が来てしまうし、SNSあたりも3話分のネタバレがどんどん投稿されるからだ。やっぱりテレビ放送のほうが良いと思うのは、もう時代遅れなのだろうけれど。
9話の冒頭の北郎の鼻歌。聴いたことのあるメロディーのような、そうではないような。歌詞もわざと判然としない風に歌っているように聞こえる。私がわからないだけかな。
今更のようだが、登場人物のロングショットが結構多い。その土地土地の特徴がわかるようなカメラの引き具合が、ロードムービーらしさを醸し出す。
北郎の旅先での朝食はいつもそこそこリッチだ。冷えたものを食べない。9話ではブロッコリー、筍、ニンジンの入ったスープ(?)とホットサンドを作っていた。以前出て来たホットドッグも、普通屋外で食べるのにわざわざウィンナをボイルしないよね、と思いながら見ていたが、それが実に北郎らしいと思えるように我々は誘導されている。着る物は作業着でも、車の中はガラクタだらけでも、仕事は3Kが多くとも、北郎は精神貴族とでも言おうか、味気ない手抜きはしない人なのだ。
洋平が家から自分の車で出ようとすると、北郎のバンが邪魔をしていて出られない。「どけよ」という意味で手を横に払うと、ボーッと考え事をしていた北郎は、反射的に洋平の車のフロントガラスを拭き始める。考えるより先に身体が動いてしまうようだ。プロアルバイターの悲しい性と言えるだろうが、ここが面白かった。
佐伯を見つけて車で追いかけるシーンで気づいた。オダギリは本当に運転しているシーンが結構あるのではないか?普通俳優さんが乗った車は牽引して、運転しているようなふりだけしてもらってカメラを回すことが多いと思うのだが、このシーンでは明らかに車全体が映ったので、牽引ではなかった。こういうところのメイキングを見たいなあ。
この回の白眉は、佐伯と北郎との電動ドライバー対決だ。電動ドライバーは触ったことがないけれど、LEDライトがつくと、ちょっと近未来の武器のようでカッコいい!二人ともガンマンよろしく構えるスピードが速いこと!でも佐伯が亡くなってしまうとは意外だった。しいたけ、美味しそうだったのになあ。嫌いな人には身震いしそうなシーンだろうけれど。
旅館の入り口にテントが張られているのを見て洋平が「旅館の前で野宿って、どういうつもりなんすかね」といっちょ前なことを言うのが可笑しい。お前が言うな!とツッコみたくなる。
偶然再会したみちると洋平と北郎という不思議な三人が同じ部屋で寝るのも可笑しいけれど、誰が寝るときに電気を消すかでジャンケンというのも更に可笑しい。修学旅行か!
横須賀の佐伯姉妹は最後までしたたかだった。北郎が示談金を催促すると「今日じゃない、今日は葬式だから」と言い、じゃあ香典をもらって行きますと言うと「それ泥棒だから。警察呼ぶから」といけしゃあしゃあと言い放つ。マジむかつくという類いの人物造型だ。
まったくもってひょんな事から北郎の借金はチャラになり、それどころか竹光幸枝が口止め料として100万円の束をバッサバッサと北郎に押しつける。7, 8百万はあったかな?
町田に帰ってきた北郎は本当に嬉しそうだ。雅美に何と報告するつもりかと、ワクワクして待っていたら、「雅美ちゃん、僕さ、貯金ができたよ」だって。これ以上素晴らしい言い方ってあるだろうか。「借金返し終わったよ」じゃないんだ!北郎の顔を見て雅美も幸福感を感じる。「丸子、パパがさ、お金持ちになったんだって」と雅美に言われた丸子は、「そうなの?じゃあ何かおいしいもんでも食べに行く?」とニコニコして車に乗り込む。ああ、いい家族だなあ。素敵なエンディングをありがとうございました!
借金がなくなった北郎だけれど、続編はどういう設定になるのだろう。ともあれ実現することを願って。
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